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2008.02.11

チェンライ行きのバス

「ウガンダ」

その日。
珍しくチェンマイ・アーケードまで20バーツで行ってくれる良心の人に当たった私は、気分よく10時10分過ぎには駅に着きました。大抵、このバス駅への行き帰りは、言い値40から50、にっこり値切って30、って感じです。地元の人は20かなぁ、多分。外人だからね、ちょっと高いのは仕方ないんですよ。最近はそう思っている私。インドでは毎回大喧嘩だけどね(だってボリ方が半端じゃないんですもん)。
チェンライ行きはバンバン出ているので、長くても1時間待ちで乗れると思ったら甘くて、10時半も一杯、11時も一杯。11時半ならあるというので、それにしますと答えると、「エアコン? ノーエアコン?」と聞かれました。不意打ちです。そうか、選択肢があるのか、チェンマイでは。
この間何本か乗り継いだイーサンと中部タイでは、選択の余地はなく、そこにあるバスに乗るだけだったので、そんなことを聞かれるとは思ってなかった私。昨日からちょっとお腹の調子がいまひとつ(食堂で生水一気飲みしてしまいまして……)だったので、冷えないほうがいいなと思い、「ノーエアコン」を選択しました。チェンライまで100バーツ。うぉ、安い。
11時のバスが発車してしばらくすると、私の乗るバスが入ってきました。タイのバスは、座席はフリーの場合が多く、仮にチケットに座席番号らしきものがあっても「マイペンライ(気にするな)」が殆どです。で、みんないい席に座ろうとどどっと乗り込む。私も乗り込みましたが、中には女車掌が仁王立ちになっており、私のチケットを奪い取って「ここっ!」と指定した先は、な、な、なんと、既に絶滅したと思っていた3列シートの真ん中でしたよ……。
北タイではもうなくなったと噂のあった5人掛けバス! まだ立派に生き残ってましたよ、みなさーん!
それにしても、3列シートの真ん中とはね。単純に計算して、五分の一の確率の貧乏クジを引いてしまいました。がっくり。

いったんバスを降りて、チェンライにいる友人に、これから乗るからと電話し、水を買って、ちょい時間を潰してからバスに乗り込むと、私の隣の窓側席に座っているのは、ウガンダさん? ですか、まじで? とほんとに思っちゃったくらいそっくりな巨漢。
あの、既にお1人で、1.8人分くらいのシートを占有していらっしゃるのですが。
私は狭いバスの通路で低い天井を振り仰ぎ、神に言いましたよ。

神様、ネタは要りませんからっ!

そもそも、5人掛けシートバスには、人権というものはありません。もちろん座るところはただのベンチシートだし、「リクライニング? けっ、貧乏人が何を言いやがる」とばかりに、当然そのような人権機能は備えられていません。そもそも背もたれも2人・3人分一緒の1枚板ですから、倒しようがない。
どう贔屓目に見ても、人間1人は0.7人として勘定されていると思います。そんな激狭シートにあっては、細身の私も間違いなく1.0人分は取ってしまいます。するとね、つまりですよ、ウガンダと私だけで、2.8人分のシートが埋まるわけですよ。
さぁ、計算してみましょう。残りはいくつ?
0.2じゃねぇか……。
どうすんだよ。
私はウガンダににっこり笑ってその隣に座りました。さすがのウガンダもちと遠慮したのか、若干体を縮め、彼の体は1.7になりました。でもマイナスは0.1だからね、たったの。
私の隣の通路側には、2歳以下の子どもしか座れません。最大限譲歩して、ウガンダにもうちょっと縮んでもらって、超スレンダーなタイ娘。私は祈ったですよ。子ども、カモン! いつもは子どもは勘弁と思ってるけど、今日だけは大歓迎だよ。隣のお姉さんがいろいろ遊んであげるぞー! お小遣いだってあげちゃうぞ!

しかし数分後、私の横に来てにこにこと微笑むのは、オーマイガッ! スレンダーの真逆のタイおばさん道を突き進む、しっかりむっちり小太りのおばちゃんでした。しかも、大量の荷物を持ち込んできている。それ、どこに置くんですか? 網棚はもう一杯っすよ? ああ、やっぱり、私の足元にも置くんですね? 私の足はどこに置けばいいんでしょうか……(ため息)
ウガンダはさらに体を縮め、ほぼ1.6になりました。私も体を目一杯縮めましたが、0.8が限界です。いくらなんだってさ、骨は縮まらないから、骨は。と言いつつも、おばちゃんが0.6で納まるはずもなく。
ぐいっ。
と、おばちゃんはお尻を私の側に押し付けつつ座りました。間違いなく彼女は半ケツです。
さらに、ぐいっ。
おばちゃんは私ごとウガンダに向かって体を思いっきり押し付けてきます。彼女の体圧は相当なもので、私は微妙に数センチ、ウガンダ側に押しやられました。ウガンダは女2人に押し寄せられてさらに体を縮めようとしますが、もう限界です。
おばちゃんは私に向かって何か言いますが、さっぱりわからん。「マイカオヂャイ」と、一つ覚えの「わかりましぇん」を繰り出す私。おばちゃんがあまりぽかんとした顔をするので、「コンイープンカー」、私日本人ですけん、と言うと、ああ、と得心して今度はウガンダに何か言ってます。きっと、もっと詰めてくれと言ってるんだろうなぁ。でもね、もう無理ですよ、彼は。彼の右半身は、バスの車体とほぼ一体化してるもん、既に。

もともとこの5人掛けシートバスには人権はないと、既に書きました。中国でもそうですが、この手のバスに乗った場合、通路側の人は体のある程度を通路側に逃がして座るしかないのです。だから誰かが通路を通ろうとすると、通路側の人は体を引っ込めなければならず、通路に人が立ち始めたりするとかなりの地獄ぶりになります。そういうバスに何度乗ったろう。新疆でも太ったおばちゃんに押しやられまくって大変だったなぁ。と、思い出話は置いといて。

バスは発車しました。比較的小振りのバスですが人間が目一杯乗ってるのと、エンジンがさほど強くないので、上り坂になると途端に自転車以下になってしまいます。チェンマイ~チェンライ間はほとんどが山岳地帯。チェンマイ盆地をあっという間に抜ければすぐに上り坂、途中一カ所平地に入ってバス駅に寄り、再び山岳地帯に入ってチェンライ盆地に下りるまでずっと山の中。上りが上れない分、下りは惰性で飛ばします。そうそう、去年のVIPバストイレ事件は、この「飛ばす下りの山道」で起きたのでしたよ(笑)。
太陽がジリジリと照りつけ、低い天井でいくつかの扇風機が回っていますが何の役にも立たず、車内は暑くなってきました。ぐいーん、とカーブに差し掛かるたびに、私はウガンダかおばちゃんのどちらかに押し付けられます。私1人じゃなく、必ずもう1人分の体重も加えて。だって私じゃ支えられないもん、ウガンダもおばちゃんも。
車内はどんどん暑くなってくる。運転手と車掌の甲高いお喋りも、気にならなくなってくる。私は体の両側をぴったりと2人のお肉に挟まれたまま、ぐいーん、ぐいーんと運ばれていきます。

そのうちにウガンダが眠り始め、おばちゃんが眠り始め、ついでに私もうとうとし始めました。
するとね。
得も言われぬ陶酔感が私を包み始めました。
その時の私は、ふっくりと湯気の立つ肉まんに両側を挟まれた羊羹のような状態です。私の腕といい腰といい、両側の肉まんにぴったりとめり込んでいるような感じ。鋳型に流し込まれた金属みたいな感じでしょうかね。ほんとにぴったりはまってる。そのままぐいんぐいんと振られる。右へ、左へ、また右へ。ウガンダへ、おばちゃんへ、またウガンダへ。どんなに振られても私は安定していて、不安がない。温かな肉まんにはまり込み、汗をかきつつも幸福な眠りを得る。
1つ悟りましたよ。

デブ専って、つまり、これか……。

いや、冗談じゃなくて、真剣に、だよ。そう、肉に包まれるって、安心するんだよ。赤ちゃんが母親に抱っこされて感じる安心感に似てるんだよ、きっと。圧し掛かられたら重くてたまんないけど、埋まる分にはきっと幸せだと思うなぁ(変な想像力をはたらかせないように・笑)。
あぁ、そうそう、細かいビーズのクッションに埋まるときの幸せ感に近いかもね。

何だか幸せな数時間でした。年が明けてから眠りがすごく短くなって、うーむ、と思っていたのですが、こてんと寝てしまいました。
チェンライから20分くらい手前でおばちゃんが降りて、私とウガンダは3人掛けに2人で座るという幸運を得たのですが、そこから先は何だか不安定でさ。揺れるたびに前の座席つかまないとダメだし、疲れました。ウガンダもちょっと物足りなさそうだった(笑)。

チェンライに着くともう3時を回っていて、出迎えてくれた友人夫妻と一緒にバス駅を後にしました。
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